アイマスPと声優オタクの関係についての話 ガラパゴス化したアイドルマスター

僕は普段から結構揶揄的な意味で「アイマスP」という言葉を使ってしまうところがあるんですが、この言葉は人により受け取り方が違う言葉だと思います。もちろん、平たい意味で言えば「アイドルマスターのファン」という意味になりますが、例えば声優の現場系オタク(アイマスのライブだけでなく、様々なイベントに顔を出すオタク)からすれば「アイマスにしか興味のないオタク」「ライブに来るのは自分たちと同じだけど、楽しみ方も目的も違う」とか、そんなニュアンスがあるんじゃないかと。実際僕もちょっと斜に構えた意味で使いがちですし、親しい他人と話すときも僕の周りの人間とはそういう文脈の上で使うことが多い気がします。

 

 

まあよく言われることですが、完全に揶揄する意味合いで「アイマスPは棒振り機」という言葉もあったりします。これはライブ中一糸乱れず大勢で、公式が販売するサイリウムをひたすら振る鑑賞スタイルを指して小馬鹿にするというものですが、これもアイマスPの一面を切り取った言葉だとは思います。

 

反対にアイマスのオタクからすると、例えばアイマスのライブで手に光物を持たないオタクを疎み、”一般的”なアイマスのコールから外れた応援の掛け声を入れる声優のオタクが苦手……で、あいつらは自分たちと違う人種だ、と感じることもあります。そのためレギュレーションにとても厳格になったり、自分の思うルールを守らないオタクがいると必要以上に気にしてしまったり、ということがある。

 

 

なぜ「声優のオタク」と「アイマスのオタク」の間にこういった意識の差、認識のズレがあるかと考えてみると、単純な話ですが、先ほども述べたようにアイマスPにはかなりの数「アイマス以外のイベントに行かない」オタクがいるということです。もうひとつ言えば、アイマスの中でもアイマスの全てのイベントに毎回足しげく通うオタクは多数派ではないという印象もあります。だからこそ、アイマスPはアイマスの世界の中で純粋培養されてしまい、外部の文化を取り込む機会に恵まれず、声優のライブとアイマスのライブとで文化の差が出てしまう。

 

それではなぜアイマスPはアイマス以外のイベントに行かないかと考えると、アイマスPはライブに行ったとき、視線は舞台の上の声優を見つつも実はその向こう側にその声優が演じるアイドルの姿を透かして見ているんです。声優が好きだからライブに行く、というよりかは、自分の応援しているキャラクターが活躍する姿を現実に投影し、それを鑑賞することを楽しみに行っている。だからそもそも、アイマス以外の声優イベントにそれほど魅力を感じない人達が多い。それが理由になっていると思います。

 

もちろん、アイマスPでも、キャラを通さない、一人の声優としてアイマス声優が喋るラジオの公録などに行く人もいます。ただそれもあくまで「アイマス」という枠の中で行われていることだから足を運ぶのではないかなと自分は感じています。

 

 

さて、話を本筋に戻して、僕は最近ライブにおける「声優のオタク」と「アイマスP」との間にある摩擦が気になっています。例えば「違うコールをしていた、あれはどうなんだ」とか、「ジャンプ禁止じゃないのにちょっと跳んだだけで怒られた……」とか、「アイマスPが奨励するコール、本当に曲に合ってるの?」とか。毎回イベントが終わるたびにTwitter上でコール論争が起こったり、ライブ中に目についたオタクを晒し上げるいわゆる「厄介報告」が起こったり。アイマスPの意見に賛同することもありますが、半分以上の事例に関しては「アイマスP、厳しすぎじゃね?」と思うことが多いですね。僕自身、アイマス現場で周りの観客と揉めることがありましたし。

 

特に近年、アイマスシリーズの中でも「765 ALLSTARS」のほかに「シンデレラガールズ」と「ミリオンライブ!」などの派生作品が誕生し、新人声優が多数アイマスに参加しライブの現場にも声優のオタクが今まで以上に流入してきたことがあり、派生作品の勢いが増せば増すほどこういった摩擦も起こりやすくなっている。

 

これは結構残念なことだと思うんですよ。事実上、アイマスは10年の歴史の中で「声優のアイドル化」を推進する一翼を担ってきたメディアです。そして今、アイドル化した声優のファンたちが旧来のアイマスのファンとの文化的なすれ違いを起こしてしまっているのはなんていうか、皮肉だなーと。もう少し器用にやれたら居心地の良くて楽しい現場が作れると思います。

 

そのためにも、もう少しアイマスPには寛容になって、視野を広くしてほしいと思います。アイマスの現場だけしか行かないのではなく、アイマスを様々なコンテンツを知るための足場として色々な現場を見に行ってみる、だとか。自分が当然だ、これが正しいと信じていた鑑賞スタイルを一度疑ってみる、とか。アイマス現場と他の声優現場との概念が乖離している現状に対して、もう少し疑いの目を向けて、積極的に外の世界に出て行ってほしい。

 

そうしたからと言って、おそらくアイマスの現場が悪い方向に変質するとか、良い意味でのアイマスらしさが失われるとか、そんなことはないはずですよ。

 

 

 

まあ「他の現場に行け!」は求めすぎかもしれませんけど、とりあえず「他人は他人、僕は僕」という考え方で、他人を気にしすぎない精神性を持ったほうが色々と楽だと思います。変なオタクを見つけては眉を顰めるのではなくステージに集中するということも大切だと思うし。

 

まあもちろん誰が見ても他人の迷惑になる行為をする観客はツマミ出すべきだし、そういうことは声優のオタクだからしょうがないね、とも思われるべきではない存在だとは断定しておきます。

 

 

シンデレラやミリオンにより声優のオタクが流れ込み、摩擦のもとになっているとは書きましたが、同時にこの二つの作品はアイマス現場を確実に変えて行ける起爆剤にもなっています。本家よりもぐんと人数の増えたキャストとか、今までにない方向性の楽曲とか、興味を伸ばす足がかりがたくさん。その足掛かりから色々な分野に興味の食指を伸ばすアイマスPも増えてきているとも感じます。だからこそこの2作品に現状を変えて行ってほしいとも思います。

 

僕はアイマスPになり切れなかった普通の「声優のオタク」なので、アイマス"も"好きな声優オタクとしての視点からこの文章を書きました。主観で書いているところもかなりありますが、まあこういう考えもあるんだな、くらいにでもいいのでアイマスPに読んでいただけると嬉しいです。

 

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