アルコール入りの飲料なら色々と節操なく好んで飲むのですが、これまでウイスキーの工場を見学したことがありませんでした。調べてみるとどうやら山梨県の北の方にサントリーのウイスキー工場があるらしいということを知り、では早速見学に行こう、ということで申し込んでみたのです。
しかし見学ツアーは思った以上に狭き門。何か月か連続で申し込んでいたのですが、どうにも当選枠を引き当てることができず「いつか行けたらいいね」くらいのノリになってしまったのですが、申込3回目(3か月目)にしてようやく当たりくじを引くことができ、1泊2日の旅行として行ってきました。
ただし、どうやら当選時点で運を使い果たしてしまったのか、おりしも当日は2日間とも台風が日本近海に襲来中。台風7号・8号のダブル台風の洗礼を受けながらの旅行となりました。
東京から中央自動車道に乗り、快調に飛ばすこと2時間余り。小仏峠、笹子峠を越えてさらに甲府盆地の向こう正面まで行くと辿り着くのが、今回の目的地である山梨県北杜市。県内最北、そして最大の自治体であり、八ヶ岳南麓をはじめとした風光明媚な地域を擁する高原地帯です。
高原列車として有名なJR小海線と並走しながら、いったん野辺山まで移動します。この野辺山、日本の普通鉄道が走る場所としては最も標高の高い地点として知られており、標高1375m地点は観光名所としても有名です。
今日は野辺山駅前の旅館に宿泊する予定で、さらにこの後早速飲酒イベントが控えているため、ここで車を乗り捨てて小海線でウイスキー工場を目指すことにします。

しかしここで問題発生。ここまで来る道中、風雨は大したことが無かったので気にも留めていなかったのですが、どうやらJR小海線が台風の影響で15時まで計画運休しているということを駅に行って初めて知ることになりました。
初っ端から旅程崩壊の危機に瀕しましたが、駅前でタクシーを召喚。ウイスキー工場までタクシー代1万2千円が消し飛びました。手痛い出費ですが、これも全てこの後の飲酒の為と自身に言い聞かせて移動します。
来た道を戻りつつ、40分ほどで白州町にあるサントリー白州蒸溜所に到着します。朝一番の回を予約したので開館までしばらく玄関前で待機することになりましたが、雨は相変わらず小雨程度で収まってくれていたためありがたい。受付を済ませ、敷地内を徒歩で歩いて移動します。
白州蒸溜所はまさに森の中の工場、といった感じで、敷地内に一歩足を踏み入れると青い森が広がっています。サントリーのESG活動として、森林保護・整備に力を入れており、野鳥をはじめとしたたくさんの生物が観察できるとのこと。東京でみられる木々とはまた違った植生の景色を楽しみながら散策しつつ、しばらくするとサントリーウイスキー博物館の建屋に到着します。

見学ツアーはここからスタート。まずは映像を見ながら、工場の概要の解説を受けます。それが終わると、建屋を移動してウイスキーの原料となる麦の仕込みについての説明が始まります。

ここで前提知識をお話ししておくと、ウイスキーには「シングル~」と「ブレンデッド」の区分けがあります。
「シングル~」とつくのは、単一の蒸溜所で作られたウイスキー。「ブレンデッド」というのは、複数の蒸溜所の原酒を掛け合わせて作られたウイスキーのことです。
サントリーのウイスキーといえば、「響」「山崎」「白州」「知多」が有名。そのうち「響」はブレンデッドで、それ以外はシングルのウイスキーです。蒸溜所の所在地名からネーミングされているので、わかりやすいですね。
さらに細かく見ていくと、「山崎」「白州」は大麦麦芽(モルト)のみから作られているため「シングルモルト」となります。「知多」はトウモロコシや小麦など、複数の穀物(グレーン)から作られており、「シングルグレーン」と呼ばれています。
白州蒸溜所では、
大麦麦芽と温水を混ぜて麦汁を作る
↓
酵母を使って麦汁を分解し、もろみにする
↓
アルコール発酵したもろみを蒸留する
↓
蒸留してできたニューポットを木樽に貯蔵して熟成させる(数年~数十年)
↓
複数種類のモルト原酒をブレンダーが組み合わせて、ウイスキーの完成品が出来上がる
という工程でウイスキーを製造していますが、見学ツアーでは各工程の様子を順番通りに説明していただけてわかりやすく、また体感可能な展示品も多く用意されていたため満足度も高かったです。

仕込や発酵を行う棟では、まるで甘酒のような甘い香りが立ち込めていました。

発酵用の容器には木樽を使っており、これは白州蒸溜所のこだわりだそう。
金属製の容器と比べると温度管理や衛生管理が難しいらしいですが、白州のやわらかな味わいはこんなこだわりから来ているとのことでした。

ポットスチルを使ってもろみを蒸留する工程ですが、ポットスチルの形(くびれ方)などによっても原酒の味が変わってくるらしいです。

ここ白州蒸溜所は標高約700メートルの高原地帯に位置しており、寒冷な気候からウイスキーの熟成には時間が掛かるため、普通よりも小さめの樽を使ってウイスキーを熟成させているんだそう。
小さい樽を使うことで原酒の量に対して木樽に接触する面積が広くなり、樽の風味や色が原酒に取り込まれやすいんだとか。
昨今はウイスキーの品薄が続いており、需要に応えるためサントリーでも生産を頑張っているとのこと。説明中のアテンダントの方の言葉でハッと感じるものがありまして、
「ウイスキーは、今仕込んだものが出来上がるのは十年先。十年先の世の中に喜んでもらえるものは何だろうか、と考えながら日々作っています」
「ウイスキーは製造に大変長い時間が掛かるもの。作り手は樽にニューポットを仕込む際に、この樽の原酒が出来上がる頃にはどんな世の中になっているのだろうかと考えたり、逆に出来上がった原酒を取り出す人はこの樽を仕込んだスタッフはどんなことを考えていたのだろうかと思いを馳せることもあります。」
と仰っていたこと。
一つの製品を、とてもたくさんの人々が携わり、時を越えて作り世に送り出す、そんな世界にはロマンを感じずにはいられませんね。
そして、一通りの工程を見学した後は最後にお待ちかねの試飲タイム。

工場内にはまるで本物のバーのような空間の「Bar Hakushu」というスペースが用意されており、ツアー参加者はそこでウイスキーのテイスティングが楽しめます。

ここではプロのブレンダーと同じ方法でウイスキー原酒と完成品の白州を飲み比べ。ウイスキーのテイスティングはトワイスアップと呼ばれるウイスキーと水を1対1でブレンドした水割りで行われます。
白州に使われている3種類の原酒は、ライトリーピーテッド原酒、ピーテッド原酒、スパニッシュオーク樽原酒とそれぞれに異なる味わいがあり、そして最後に完成品の白州を飲むとそれら3つの原酒の要素が上手く引き立て合いながら調和していることを感じられます。
どれか一つが強いのではなく、口当たり、風味、後味それぞれに原酒の表情が残っている感じ。ウイスキーのブレンディングの奥深さを感じます。
見学終了後はショップでお土産をお買い物。
見学ツアー参加者に限定して、白州12年が一人一本、定価で購入できる嬉しいチャンスもあります。蒸留所限定ウイスキーとセットで購入。それから、ウイスキー樽の廃材を使ったナッツ用の小皿も購入しました。
昼食は工場内併設の「Hakushu Terrace」を予約していました。お土産を購入していたらちょうどいい時間になったので建物を移動。開放感のある明るい雰囲気のレストランです。
悩みましたが、看板メニューである白州フォレストピザとキノコのビスマルクを一枚ずつ。加えてサラダとソーセージの盛り合わせに、白州森香るハイボールをオーダーしました。


ピザはどちらも絶品。新鮮な野菜がたっぷりと使われており、すっきりした味わいの白州ハイボールとのペアリングもなかなかでした。
食後は少し時間に余裕があったため今度はテイスティングラウンジへ。こちらのラウンジでは1杯ごとにチケット購入制でウイスキーのテイスティングを楽しめます。

ラウンジの奥の窓から白州の森を眺めながらグラスを傾けます。なんて贅沢な時間なんだ……
その後、シャトルバスが発車する時間になるまでウイスキー博物館の上層階を見学。ここで誤算がありましたが、ウイスキー博物館は予想しているよりもボリュームが凄かったこと。

大量の解説文、ウイスキー製造にまつわる物品の展示、ヴィクトリア朝時代のバーを再現したスペース等、ゆっくり観覧したら一時間以上かかってしまいそうな充実した展示で、正直なところ「早く言ってよ!」という感じ。帰りのシャトルバスの時間の兼ね合いで駆け足での見学になりましたが、次回は時間を長めにとってゆっくりと見学した居場所でした。

帰りは無料のシャトルバスで小淵沢駅まで移動しました。
その後はやっと運転再開した小海線で清里まで移動して散策し、完全にゴーストタウンと化した街並みにビビったり、野辺山の宿で看板犬と看板猫に癒されながらくつろいだりとのんびり過ごしてきました。
サントリーの工場見学は府中のビール工場に続いて2件目だったのですが、白州蒸溜所は展示の質が凄い。
関東圏からのアクセスも良好ですから、皆様もぜひチャンスがあれば訪れてみてはいかがでしょうか。




















































